精子のこと

01.精子について

精子について画像

精子は、運動能力のある生殖細胞です。頭部、中片部、尾部で構成されています。精子は、精巣で作られて精管を通って尿道まで運ばれます。精子の大きさは、およそ0.06mm。射精され膣に入った精子は、卵子と出会うために卵管をめざして子宮内を進んでいきます。子宮内腔が約7cm、卵管の長さが約10cmですから、精子にとっては長い旅のようなものです。
しかも、かなり過酷な旅です。一度に射精される精子の数は、2~3億個と言われていますが、女性の膣内は細菌やウイルスが侵入しないように酸性度の高い状態に保たれているので、酸から精子を守るアルカリ性の液体(精漿/せいしょう)に守られながらも精子の99%は子宮に到達する前に死滅。卵子の目前までたどり着ける精子はおよそ数十~数百個と言われています。

02.精子の基準値

項目 基準値
精液量 1.5ml以上
精子濃度
(1mlあたりの精子数)
15×106/ml以上
運動率
(動いている精子の割合)
40%以上
正常形態率
(正常な形の精子の割合)
4%以上

男性不妊の原因のほとんどは精子の数・運動性の低下です。ですから、男性の不妊検査は、まずは精液の量や精子濃度・運動性を調べる検査から始まります。
そして、通常の性交で自然妊娠するための最低限度が「精子の基準値」です。ただ、男性の精液の状態はさまざまな影響を受けて常に変動しているために精液検査の結果はばらつきがとても大きいです。1回の検査で基準値を下回っているといっても妊娠が望めないわけではなく、また、基準値を上回っているとしても必ずしも妊娠が保証されるものではありません。
1回の検査で判断せずに一定期間をあけながら複数回の検査をおすすめします。
検査日までの禁欲期間は2~7日を目安にしてください。射精しないと精液の白血球数が増加し、精子の質も低下するため、検査結果に影響が出る可能性があります。

○下の図は同じ人が1週間に1回、120週間連続で精液検査を行い、精子の濃度の変化を示したもの

精子の基準値

出典:WHO 精液ラボマニュアル 1992年

03.精子の誕生

精子の誕生画像

精細管
精子の基になる精祖細胞は、精巣の中にある精細管内で、ホルモンの働きかけにより細胞分裂を繰り返します。この過程で抗がん剤などにさらされると精子がうまく作られなくなります。精祖細胞が精子に成長するまで、約74日かかります。
精巣上体
精祖細胞は、精子まで成長すると精巣上体へ入って成熟し、自分の力で子宮内に進んで行く力や、卵子に進入する力をつけます。
精管
成熟した精子は、精管内に待機し射精の時をまちます。

04.精子と加齢

精子は、思春期以降、高齢になっても毎日新しくつくられているため老化はしないと思われているかもしれませんが、実は精子も加齢とともに徐々に機能が低下します。精巣の大きさも少しずつ小さくなり、男性ホルモンをつくる力も緩やかに弱くなっていきます。
1日に作られる精子数は年齢とともに減少すると言われていますが、精液量も減るので精子濃度はあまり変わらないとされています。
たとえ運動精子が存在していても、その精子の機能が低下していると体外受精などによる受精率や妊娠率が低下する可能性があります。また、男性も35歳を過ぎると不妊治療による出生率が下がるという報告もあります。女性の年齢や他の要因を除き、男性の加齢によって自然流産のリスクが上がるという症例研究も比較的多数報告されています。子どもを望んでいるかたは一度ライフプランライフプランを作ってみてはいかがでしょうか。「子をつくる」タイミングに関して向き合うことができるかもしれません。

夫婦で妊娠・出産・子育てを希望した時点での男性の年齢
出典:Hum Reprod Update 16:65-79,2010
流産リスク
出典:Hum Reprod Update 16:65-79,2010
ひとりで悩まないで、とても大切な妊娠・出産のこと 相談窓口のご紹介
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